黒澤夏子(くろさわ なつこ)
取締役
アートディレクター
感情の移り変わりがデザインのベース
私自身のものづくりのテーマは、気持ちや感情の移り変わりみたいなものを載せたデザインをすること。
以前に、花びらがふせんになったhana-fusen(https://plus-d.com/hana-fusen/)をつくりました。
これは、ニューヨークのMOMAでも販売されました。
可愛い花を作りたかったのではなく、ふせんとして使うために花びらをはがすたびに、花占いするみたいにちょっと気持ちがうれしくなったりするような、そういう、気持ちが動く行為を込めることに意味があると思ってデザインした製品です。
デザインはカッコいいものを作ればいいというのではなく、その背景にある物事も含めてそれをデザインで解決する……今で言うソーシャルビジネスのようなものと捉えている部分ですね。
だから会社の仕事も、プロジェクトの一部を切り取って、「ポスターだけ、パンフレットだけ作ってください」という仕事より、プロジェクト全体や、ブランドの世界観をクライアントと「一緒に作りましょう」というものが多いです。
頭の中にある「人」や「ものごと」のイメージを 活かす
私は今まで出会った人のパーソナリティが、全部頭の中にストックされているんです。
その他にもお店とかものごととか、もちろんデザインとか、今の流行りとか昔の流行りとかもあるんですが、すべてラベリングで整理されてストックされていて、その情報を、必要なときに自在に取り出せます。
あらゆる人の「感情」もストックされているから、他の人が「あの人は変わった人だ」と評価している人でも、膨大なストックの中にはその人と同じような属性の人がいるので、「ああ、このタイプの人なんだな」と、その人を理解することができるんです。そのせいもあって「共感性が高い」と言われています。
だから仕事でも、クライアントの担当の方が言いたいことやイメージしていることも、ストック情報と照らし合わせて理解することができるんです。
クライアントの担当の方の伝えたいイメージはなんなのか正確に知るために、結構ヒアリングというか、お話もします。その人の幼少期から今に至るまでのお話を聞くこともあります。人生の選択みたいな話を聞いたら「なぜその選択をしたんですか?」と聞くこともあって、そうすると、言葉では「こういうものを作ってほしい」と言っていても、実はこの人は別のもののほうが好みだろうと分かってくることもあります。
もちろん、依頼されたデザインのものも作ります。もう一案つくって、そちらのほうに「本当はこういうものを望んでいるのかも」案を入れるんです。すると、「あ、確かにこちらのほうがいいですね」と選ばれる。これは仕事の醍醐味ですね。
これから取り組みたいこと
これからは、カラーコードのオリジナル製品も作っていけたらいいなと思っています。
やってみたいのは、アート思考の考え方を日常で使えるように、考え方をまとめるワークシートのようなもの。まだ、具体的な形はないんですが。
いずれにしても、私自身は気持ちや感情の動きが載ったデザインを大切にしたいですね。
ある方を通して知り合ったコミュニティで、グッズを作ったことがありました。
それは、自己認知に関するグループでした。特に女性はいろいろ困難や苦労した経験を経て、自己認知をしたいと思う人が多くて、セミナーやワークショップでの学びの際に、ツールが必要になるんです。
その時作ったのは、ものすごく辛い状況から夢を諦めずに行動して、結果、今はすごく幸せな人生に至った講師の女性が主催する会で、「願いや夢を忘れずに持ち続けることは大切」というテーマの講演会で使ったグッズでした。
パスポートの形をしていて、その中に自分の気付きやできごとを書いたりするものと、航空券のチケットに見立てたメモを作りました。
航空券って、持っていれば必ず目的地に到着できるツールですよね。だから、このグッズの航空券に目標を書き留めておくと、気持ちを忘れずにピン留めできて、夢に向かい続けていき、いずれそこに到達できるというお守りになる。これも気持ちの動きや感情を形にしたデザインです。
デザインも持っているだけで嬉しくなるようなおしゃれな感じで、色もちょっと心ときめくようなパステルカラーにしました。
こういうジャンルも会社として広げていけたらと考えています。
